台詞イントネーション作曲、台詞からメロディーを作るのってどうやってる?
(この記事は、音MAD Advent Calendar 2021に参加しています。)
adventar.org
どうやってますか?
台詞のイントネーションから音階を得て作曲すると言われても正直具体性に欠けるので、私のやってる方法を紹介します。
ちなみに、「音MAD Advent Calendar 2018」で既に水無月さんが同じような内容を執筆されていました。残念ながらニコニコ動画のブロマガは現在サービス停止しているのでURLのみの紹介となりますが……。
ざっくり説明する台詞イントネーション作曲の作り方
https://ch.nicovideo.jp/6june/blomaga/ar1702250#-
台詞イントネーション作曲の要はなんといっても台詞を採譜する所にあると思いますが、傍目には、いかにもセンスが必要な作業なんだろうと思われているような気がします。実際センスで無双している御仁もおられる訳ですが、私は最近台詞の耳コピすらやっていません。
私の手順は以下の通りです。上記の要と言っているのは3の部分に該当し、台詞をモーラで区切って、選定したスケール上の音にチューニングしてから採譜しています。他は音MADやDTMと共通しているので今回はザックリと流します。
- 曲のBPMを決定する
- 音声波形を用意し、タイムストレッチ(台詞合わせ)する
- スケールを選定し、台詞をモーラ単位でチューニングする
- 曲のコード進行を決定する
- 曲を完成させる
1. 曲のBPMを決定する
曲のBPMを決定します。私は♩=100~130が好きです。この場合は1拍で最大4モーラが入る感じです。
|きょうは|クリスマス|イブです|ね _ _ _|
こういう感じですね。16分音符に合わせて台詞を合わせていく想定です。
2.音声波形を用意し、タイムストレッチ(台詞合わせ)する
普通の音MADと全く同じ作業です。上手い人の台詞合わせを思う存分真似しましょう。
3.スケールを選定し、台詞をモーラ単位でチューニングする
見ての通り人の声は周波数が滑らかに変化しています。一番下以外は倍音ですね。これを十二平均律上の音(左のピアノの鍵盤)にチューニングしていく必要があります。横軸(リズム)は既に合わせたので、合わせるべきは縦軸(ピッチ)ですね。
とりあえず、上記の波形を例として用います。まず、台詞合わせだけした元の音声がこちらになります。皆さんなら、これで台詞イントネーション作曲してくださいと言われたらどうしますか?
(注)これから先はPCの録画画面が続きますが、たまに音質が悪くなって(ビットレートが極端に落ちて)ノイズが走っているのでご了承下さい。原因が分からなかったです。すみません。
私はとりあえずピッチ編集ソフトに掛けます。私はmelodyneを使っていますが、モーラ単位でピッチを編集できるものであれば何でもいいと思います。
後はこれを十二平均律上の音になるようにカタマリをピッチ変更するだけです。音の外れたものを矯正しているのでチューニングと勝手に読んでいます。
ここまでやってから採譜作業やってます。カタマリをMIDIノートに転写していくだけです。分かりやすいように採譜後のメロディー(シンセ)も一緒につけましょう。
これで完成と言いたい所ですが、あまりにも前衛的なメロディーとなってしまいました。これはメロディーにスケールが無いからです。(無いという表現は誤解を招くので、クロマティックスケール(半音階)となっていると言った方が正しいですね。)
実はこの状態でも、センスのある人間は巧みなコード進行で違和感のない仕上がりにしてしまいます。凄いと思いますが私には真似できないので、もっとわかりやすいメロディーにしていきます。ちなみに、「分かりやすいメロディー」の基準ですが、スケールが途中で変化しない事、想起されるコード進行がダイアトニックコードのみで完結できるメロディーという事にしておきます。
まずダイアトニックスケール(全音階)でチューニングしていきます。
全音階 - Wikipedia
Cメジャースケールでチューニングしてみましょう。モーラのカタマリを全てCメジャースケール上の音となるようにピッチ変更します。
結構分かりやすいメロディーとなりました。ただ、まだメロディーとして不自然な箇所も残っています。マイナースケールでもチューニングしてみます。
やはり違和感のある箇所が存在しますね。
素材にもよるんですが全音階でチューニングしても微妙な結果に終わることが多かったです。メジャースケールだと第4音(ファ)と第7音(シ)、マイナースケールだと第2音(レ)と第6音(ラ♭)が悪さしてるんじゃないかと。今回の例だと、メロディーにトライトーンの跳躍が入ってますね。第4音(第6音)はコード付けた際にアボイドノートになりやすいのもあります。アボイドノートを上手く処理できない私にとっては死活問題です。
素材が偶然ハマれば全音階でチューニングしても綺麗なメロディーになりますが、私はあんまりやらないです。というのも、偶然ハマるかハマらないかの判断がつかないので。もしくは単純に、これはハマったなって思える感度が人より鈍いのかも知れません。
悪さしている音を抜くと、みんな大好きペンタトニックスケールになります。所謂ヨナ抜き(ニロ抜き)音階と呼ばれてるスケールです。
早速Cマイナーペンタトニックでチューニングしてみましょう。
最後がB♭で終わっている事に着目して、B♭マイナーペンタトニックでチューニングとかもいいかも知れません。
良い感じですね。調子に乗って伴奏もいれてみます。
どうでしょう。割といい感じになったと思います。私はこのペンタトニックスケールでチューニングする手法を多用しています。殆どの台詞がこれで台詞イントネーション作曲としてまあまあ使えちゃったりします。調も問いません。その一方で、ペンタトニックスケールは半音程が無いのでメロディーが単調になりやすいという欠点も……。
ここから実例の紹介になります。
Aマイナーペンタトニックでチューニングしています。チューニング後に台詞を組み替えてメロディーが良い感じにつながるようにしています。採譜後のリードシンセにはグリッサンド入れたりポルタメント入れたりして遊んでます。台詞のイントネーションをそのまま使わないといけないなんてことは全然無いです。音MADはそんな堅苦しいもんじゃないと思うので。
Eマイナーペンタトニックでチューニングしています。こちらは遊んでるのが分かりやすいかと思います、台詞を無視して別のメロディー奏でてますね。
Gマイナーペンタトニックに第2音(A)を追加したヘキサトニックスケールでチューニングしています。ペンタトニックスケールには無い半音の動きが追加されます。上で第2音は悪さするって言いましたが、第2音(メジャーなら第7音)だけなら実は案外いい感じになる事も多かったり少なかったり……。
後半は転調してF#マイナーペンタトニックに第2音(G#)を追加したヘキサトニックスケールでチューニングしています。転調前と機能和声的な面のコード進行は全く一緒なのですが、使う台詞を変えても成り立つというのがチューニング法の強みです。
台詞はだいぶ長めにガッツリと使いました。矢野さんの所とかそのままザクっと持ってきました。
はい、とまあこんな感じです。今後はもっと色んなスケールを使ってみたいですね。スケールをこねくり回すのはジャズの分野でしょうか。
4.曲のコード進行を決定する
メロディーからコード進行を決定していきますが、普通の曲でも先にコード進行から組み立てる人がいるように、私も台詞イントネーション作曲にも関わらずコード進行から組んだりします。「白河」はまさにそうでした。
5.曲のコード進行を決定する
イントロからアウトロまで頑張って作りましょう。正味ここが一番大変だと思います。使える素材が少ない場合はあの手この手で尺を伸ばすのです。素材が少ない時の音MADで飽きさせない方法とかだれかブログ書いてませんかね。